「補償」とは?弱みを強みに変えようとする心の働き

看護

防衛機制の一つである「補償(compensation)」は、自分の弱みや欠点を他の面でカバーしようとする心の働きです。成長や努力につながることもあれば、過剰になると逆効果になることもあります。

補償とは?

補償とは、自分の短所や不安を補うために、別の分野で努力し成果を上げることでバランスをとろうとする防衛機制です。自信のなさを和らげ、自己価値を保つ役割を持ちます。

身近な事例

勉強が苦手な子が、スポーツに打ち込み、スポーツが得意になることで自信をつけることができる例はわかりやすいでしょう。実際、一つ自分の得意分野が見つかると、人間的にも成長することが多いですよね。また、性格的なことでも、同じことが言えます。例えば、内向的で性格に自信がない人が、資格取得や仕事での成果を積み重ねて自己評価を高めること、などです。私自身もこのタイプだと思っています。自分からはあまり積極的に人と関わることができませんが、社会福祉士の資格を取ったり、趣味を持つことによって、周囲から関心を持っていただけたりしています。ある意味で「補償」しているのだと思います。

看護師の現場で見られる補償の事例

これを看護の現場で考えると、結局は自分のできない部分を別のことを行うことでカバーしている事例は結構あるのではないでしょうか。

例えば、患者さんとの会話に苦手意識がある看護師が、その分、観察力や処置の正確さを高めようと努力したり、 失敗経験の不安を抱える看護師が、徹底した準備や知識習得で補おうとすることはよく見られます。

また、私自身のことを言うと、体力に自信がないので、スケジュール管理や効率的な動きで弱みをカバーすることが多かったです。 リーダーシップに不安がある人が、記録や情報整理でチームを支えようとすることもあるでしょう。

しかし、 周囲からの指摘を恐れて、必要以上に完璧を目指し続ける危険性もあります。

補償のメリットとデメリット(医療職の視点)

メリット

成長や努力につながる

弱みを埋めるために努力することで、スキルアップしていくことができるでしょう。

自己肯定感を守る

「自分にはできることがある」と思えることで、不安や劣等感を和らげられ、自信をつけていくことができます。 また、自分の弱点を他の形で補うことで、チーム貢献することもできます。

デメリット

過剰な努力で疲弊する

弱みを補おうとしすぎて、燃え尽きや体調不良につながる危険性もあります。

本質的な課題を避けてしまう

弱点を直視せず、別のことだけで補おうとするため、根本解決が遅れてしまうおそれがあります。本質を見ようとしないので、 チームの中で孤立感を抱き、周囲とのずれがおこることもあるでしょう。

まとめ

補償は、自分の弱みを埋めるために自然に働く心の仕組みであり、努力や成長の原動力になることも多くあります。

ただし、補い続けることで無理を重ねてしまうと逆に負担となり、心身を疲弊させることもあります。

「補っている部分と、本当に向き合うべき部分」をバランスよく見極めることが、看護師としても、自分自身としても健全な成長につながります。

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