2024年7月5日、イギリスでは政権交代の動きがあり、労働党が14年ぶりに政権に復帰しました。
ここで、労働党は政策の1つに、国民健康サービスの問題解消に向けて取り組むことを掲げています。
イギリスの医療制度については社会福祉士の国家試験にも出てくるところであり、今回は勉強がてら振り返ります。また現在の問題点について、労働党がどのような対策を講じているのかまとめてみます。
イギリスの医療制度について
イギリスでは、NHS(National Health Service)、日本語で言うと国民健康サービスが提供されています。これは税金を財源にした国営のサービスであり、すべての住民が原則無料で医療を受けることができます。無償による医療サービスの提供という点が、他の各国と異なる大きな特徴です。
NHSの利点
①全ての住民が医療サービスを必要な時に受けられる権利が保障されています。
②ケア品質委員会や、監視システムを導入したことにより、ケアの質が高いと言われています。
③費用対効果が高い
現在のNHSの問題点
①資金調達の問題
近年は財政難により、税金だけでなく国民保険料も資金として組み込まれるようになりました。しかし財政問題は深刻なようです。
②労働力不足
特に医師と看護師の不足が、患者へのケアに影響を及ぼしています。最近のデータでは成人向け社会福祉の欠員は10万人を超えたとのことです。また、資金調達が難しいことから、新人職員へのトレーニングなどに十分投資ができなかったり、給料も上げられない現状があります。
医療業界特有の、命を相手にすることから生じる高いプレッシャーや、バーンアウトなども頻繁に起きており、医療スタッフの不足につながっています。
③治療の待ち時間が長い
治療の待ち時間が長くなることで、患者の状態悪化や治療の効きにくさに繋がり、ミスが増え、患者の満足度の低下にも関係が及びます。また、患者の健康に影響を及ぼすだけでなく、長期的に見ると、さらなる医療費の増加につながってしまいます。
労働党の政策
治療の待ち時間の解消。これが今回労働党の政策の1つに挙げていたことでした。労働党は対策として毎週4万件の予約診療を増やすことを講じています。
またこの対策をするためにも必要なのは何より資金となってしまいます。NHSの資金源を正常化させるために、納税回避や非定住者など、現在税優遇とされている対象者から税金徴収をしていく、としています。この、いわゆる「抜け穴」を取り締まる方針を掲げています。
政策に対する個人的な感想
医療サービスの質の向上のために資金調達を考えるのは当然で、うまくいけばいいなと思いました。ただどこまでを税優遇と判断するのかが難しいかもしれません。場合によっては厳しい生活を強いられている人からさらにお金を取りあげることにもなりかねないからです。またこれは素人意見ですが、さらなる税金の徴収だけでは十分な資金調達は難しいような気もしました。
NHSは、医療を受ける側から見ると無料で受けられる素晴らしいサービスです。社会福祉士の勉強で学んだ時は、その利点にしか目が行きませんでしたが、今回のイギリスの政権交代というニュースをきっかけに、NHSの課題についても知ることができました。
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