福祉業界における情報伝達の基本。情報の4性質とは。

社会福祉

 福祉の業界で働くには、人と人とのコミュニケーションが欠かせません。またそれは、職場内や他の同職種の職場とのやりとりにとどまるものではありません。なぜなら、我々の1番大切にするべき相手はクライエントであり、彼らは、様々なバックボーンを持った、年代も性別も職業も家族関係も趣味嗜好も身体的特徴も抱えている悩みも、何もかも一人一人異なる人間だからです。

 また、職場内のコミュニケーションにおいては、それそのものが利用者様の生活や命に直結するため、確実に行われる必要があります。病院や福祉施設内で起こるインシデントやヒヤリハットの原因の多くに、コミュニケーションエラーがあります。

 それだけ、この業界では、コミュニケーション、つまり情報伝達が適切に行われる必要があります。ただ単に情報を伝えれば良いのではなく、「適切に」行うためには、情報の性質を見極めることが大切だと強く感じています。今回は特に、情報を伝達する側の立場となった際に心得るポイントをまとめました。

情報の性質を見極める

1 正確性

 その情報はどれほど正確なものでしょうか?どこから伝わってきた情報かによって正確性は変わります。

 分かりやすい例を挙げてみます。私はデイサービスで看護師をしていますが、介護士さんから、「利用者のAさんが昨日の夜、ベッドから落ちました」と報告をもらった場合、すぐに「それは誰が言っていましたか?」と聞き返します。

 Aさんが認知症であった場合、Aさんの発言か、家族の発言かによって、情報の正確度は変わるでしょう。

2 緊急性

 その情報は、今すぐ誰かに知らせるべきものか、それとも後でも良いものか、見極めましょう。

 例えば先ほどの例で言うと、Aさんがベッドから落ちたとして、どのような状況で落ちたのか、頭部は打っていないか、などその周辺の情報を知ることで、緊急性を把握できます。

 利用者様への対応に限らず、職員間の情報伝達においても同様です。今すぐ言わなくても良いことを、仕事で忙しい時間帯に言ってしまっては、混乱を引き起こす原因となります。

3 必要性

 その情報を本当に伝える必要があるのかを考えてみることも大事です。

 同じく先ほどの例で考えると、例えばAさんがベッドから落ちただけで特に外傷もない場合は、特にかかりつけ医に知らせる必要はないでしょう。しかし、頭を打って意識が朦朧としている場合は、医師に知らせる必要性がでてきます。

 また、先ほど述べた正確性(一般的には信憑性とも言えるでしょう)が低かったり、不確実な情報である場合は、伝える必要性も低くなります。必要のないものを伝えても、無意味な上に、相手を不安にさせたり、混乱させたりする原因にもなります。

4 秘密性

 その情報がどれだけプライベートなものか、注意する必要があります。これは守秘義務にも関わってくるものですので、気をつけなければなりません。

 例えばデイサービスだけ利用されている利用者様が、癌の手術をするので一週間ほどサービス利用しません。と言う情報があったとすると、本人や家族、ケアマネからその連絡を受けた施設職員は、デイサービスの職員にだけ知らせるようにし、そのほかの部門の職員には知られないように配慮しなければいけません。

情報伝達の基本とは

 現在、様々な方法で、情報伝達ができる時代となりました。インターネット、SNSも発達しています。このブログもそうですが、伝えたい情報を誰でも簡単に、今すぐに、伝えることができるようになりました。

 しかし、デバイスを使いこなそうとするあまり、情報伝達の最も重要な部分が忘れられているように感じる時があります。情報伝達とは、伝えたい相手に、正しく内容を理解してもらって初めて成立するものであると言うことです。

 例えば、大規模の病院などでは院内メールを用いて職員個人に情報伝達をするのは効率的です。しかし、小規模の福祉施設で、利用できるパソコンもわずかしかなく、その上職員もあまりパソコンに強くない主婦のパートの方が多かったりする場合に、職員個々人にメールアドレスを作って施設内メールを運用する必要はあるでしょうか?それでメールで情報を伝えて、誰も確認できなかったとして、それはメールを受け取る側の責任になるのでしょうか?

 伝える側は、どうしたら正確に、確実に相手に伝わるのかを考え、相手に伝わる伝達手段を用いることが必要です。相手に伝わったことを確認できるまでは、そのコミュニケーションの責任は伝える側にあると心得るべきです。

まとめ

 情報には、正確性、緊急性、必要性、秘密性の4つの性質があり、それを見極めた上で、適切な伝達デバイスを用い、適切なタイミングで行うことが、コミュニケーションエラーや情報伝達における混乱を防ぐことにつながります。またこれらについては、言うなれば、「伝えたい相手にどうやったらしっかり伝わるだろうか、と考えること」に集約されると思います。

 誰も聞いていない状況で発言し「私は言いました」とか、緊急性のある情報をメールで一斉送信し「メールで伝えました」と言うなど、情報をただ伝えることで自分は責任を果たしたと思い込んでしまっている人を時々見かけます。

 しかしこれは厳密に言うと情報を伝えているのではなく、情報をただ自分の手から手放したに過ぎません。私はこのような例は、ほとんど伝える側の責任だと思っています。それが施設をまとめる立場や管理職であるなら尚更です。

 看護師や社会福祉士になるための学習の中に、コミュニケーションスキルをしっかりと学ぶはずです。それだけ医療や福祉の世界では、相手に正しく確実に伝えることが重要なのです。そしてその根幹は相手を知ろうとする姿勢であると、私は考えています。それがあれば、情報の伝え方も、時と場合に応じて、その人に合った伝え方ができるのではないでしょうか。

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