看護師の資格を持ち、病院以外での活躍の場を探している方もいらっしゃるでしょう。
しかし、看護技術や医療の知識が低下するのではといった声も聞かれます。
結論から言うと、病院と比べて確かに、直接的に医療的な看護技術や知識は用いません。しかしだからと言って新卒の病院経験のない看護師が務められる仕事ではないのが事実です。私は病院経験は5年はあった方が良いと考えています。それはなぜなのでしょうか。今回、デイサービスの仕事の良い点、気をつける点、仕事内容、そして病院勤務からデイサービスへと転職して感じていることをまとめます。
良い点:とにかく体の負担が少ない
良い面をまず述べると、夜勤がないためとにかく身体的には楽に感じられます。また、基本的にその日のサービスはその日で終わるため、勤務後インシデントしたかなど悶々とすることがないため、その点では精神的にもオンオフの切り替えがしやすいでしょう。
気をつける点:利用者様への気遣いが必要
もちろん病院においても患者様への気遣いは必要ですが、デイサービスの目的は疾患の治療ではなく、生活を豊かにすると言った面が大きくあります。そのため病院とは一味違った気遣いが必要になります。デイサービスの名の如く、サービスを提供する場所でもあるからです。
看護師の業務
利用者の健康チェックや健康管理です。具体的にはバイタルサインの計測、入浴時の身体チェックや薬の塗布、内服薬の管理、デイサービス利用中の体調不良や急変対応です。
病院勤務の経験が必要な理由
1人で大人数の健康管理をする
看護師の業務内容だけ見たら、なんだ楽そうじゃん、と思われるかもしれません。
しかし、基本的に看護師の人数は1人です。(定員数の多い施設では複数雇っているところもあります)
もし25人ご利用の日があれば、1人で25人の利用者の健康を把握していなければなりません。
その日デイサービスに来られて測ったバイタルサインや体調、自宅で転倒などのイベントがないかなど、朝の短い時間に情報収集をし、その日の観察ポイントと優先順位を1人で頭の中で行います。それに沿って、入浴時に観察が必要な人などリストアップし、介護士さんと情報共有します。介護士さんはこれらのことに関しては看護師の指示通りに動くため、看護師としては病院のように相談する相手がおらず、自分1人で行わなければなりません。
病態や薬の知識は診療科問わずに必須
また、利用者様の既往歴についても主要なものは把握する必要があります。例えば悪性腫瘍を抱えながらも、治療は本人希望で行わず、可能なだけデイサービスに通いながら自宅で過ごされる方もいらっしゃいます。
この場合、定期受診の結果などをこまめに聞くようにし、本人が定期受診の内容をどこまで理解できているのかの確認や、いざ腫瘍が増大してきた時に、今後起こりうる症状や観察すべきポイントなど、生活相談員さんや介護士さんと共有して、念の為サービス利用中の急変時の対応について話し合ったりもします。利用者様はもちろん人によって様々な診療科に通って通院しているわけですから、病棟勤務のように、その病棟の診療科の知識さえあればいいわけではありません。
また、既往歴については、サービス開始時のヒアリングの際、基本的に生活相談員の方が本人やご家族に聞くため、時々正しい情報が得られない時があります。後から入院して、退院後の看護サマリーを見て、実はこんな既往があった、と分かる時もあります。
そのため、私は利用開始時に処方箋を預かり、なんとなくどのような疾患を持っているのかを薬の情報から推測するようにしています。
急変時や体調不良時の対応
デイサービスでの急変は滅多にありませんが、それでも0ではありません。私も経験したことがあります。急変時は特に、1人でやることが増えます。介護士さんたちはそのほかの利用者さんを見てくださっていますが、少なくとも後1人は判断力のある介護士さんに手伝ってもらう必要があります。基本的に看護師はその場を離れられませんから、物品を持ってきてもらったり、病院や家族に連絡してもらったり、適切な指示出しが必要です。
急変までいかなくても体調不良で急遽病院受診することもあり、病院まで付き添うこともあります。
これらの対応を経験し、病院勤務は安心だと感じてしまいました。周りに急変対応をしっかり学んだ看護師や、医師がたくさんおり、医療機器も豊富にありすぐに使えるわけですから。例えば酸素ボンベ持ってきてくださいと介護士さんに頼んでも、その介護士さんが酸素ボンベが何か分からなかったり、吸痰の準備をお願いしても、看護師に気を遣ってか丁寧に準備していて時間がかかったり、そもそも医療器具が古くて使えなかったりなどヤキモキすることがたくさんありました。
これに関しては、少しずつでも介護士さんたちにも急変時や体調変化した場合の対応について理解を求めることが必要だなと感じています。それと同時に、看護師の仕事に対してしっかり理解があり、行動力のある介護士さんがどの人なのか、いざという時に頼りになる人を見極めておくことも必要だと感じています。
まとめ:病院勤務5年は必要と考える理由
これらのように、一見、医療的なことを何もしていないように見受けられますが、実は病態や薬の知識、治療方法や自宅でのセルフケアなど、病院で働くときと同じような看護の知識や技術がないと、仕事を全うできないと感じています。その他にも、感染対策など看護師が率先して判断し指示を出すことが求められることもあります。
その上、すぐに手を貸してくれたり相談に乗ってくれる看護師や医師がいませんから、自分1人で判断しなければなりません。また、介護士さんたちへの指示出し、必要時委託医やかかりつけ医への連絡など、リーダー的な役割が求められることもあります。
そのため私の体感としては、デイサービスで働くには、病院での病棟リーダーの経験はあったほうがいいと考えます。そう言うわけで少なくとも病院勤務5年は必要ではないでしょうか。
職場がどこであれ、看護師は一生勉強し続ける必要がある職業であることには変わりありません。ご自身が納得のいく職場にであい、看護師としての仕事に誇りを持って働くことができたら、それほど幸せなことはないと思います。
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